声が聴きたい
少しイヤな気持ちになったが、気を取り直し店までくると「うわぁ、素敵な、お店……嬉しい」と隣から可愛い声が。
今日予約していた店は2年ほど前にオープンしたところで、人気があり、味も評判に違わないといわれているところで、3か月前に予約してかないと土日は難しいらしい。
案内された席は作られた中庭が見える窓際で、他の客と少し距離があるので、ゆったりした気分になる。
前菜、スープ、パスタ、メインのミラノ風カツ、種類は多くあるが、一つ一つは少な目で、和希はレディース用の盛り付けらしく、俺より量が控えめだ。
ドルチェが出てきたとき、俺は和希の前に小さな箱を差し出した。
「和、誕生日おめでとう。今年も一緒に居られて嬉しいよ。開けて?」
「秀……ありがとう……」潤んだ目で俺からプレゼントに視線をうつし、リボンをほどく。
気に入ってくれるか……今回も、優一には聞かずに自分で以前から決めていた物にした。
「秀……素敵……」そう言ってケースに入ったリングを見つめたままポロポロっと涙をこぼす和希。