声が聴きたい
時々怖いのか、体がブルッと震えたり、涙がツーッと流れたりするが、少しずつ落ち着いているように見えた。
手に持ったままの、電話機で着信履歴をみてみる。
一番新しいものは、知らない携帯電話番号だった。
「和……」
…………呼び掛けるが返事がない。
顔を覗き込むと、まばたきしながら、深呼吸しているようだった。
もう一度「和……?」と、はっきりとした声で呼び掛けるが……全く反応がない。
ドキリ……
心臓がイヤな感じで早くなる。
その時、インターフォンが鳴る。
「和、秀が来たから玄関に行ってくるよ?」と言いながら離れて立ち上がると、温もりが急に離れて、同時に和希が思いきり顔を上げて俺を見上げてきた。
「ゆ、……どこ……」止まっていた涙がまた溢れてくる。
和希は俺が寄り添い、二人でソファーに居たことは認識できていたみたいだった。
「げんかん、あけてくる。しゅうがきた」と、正面からゆっくりとはっきりと、口を動かし話す。
それを見ながら、和希の顔が青ざめていくのが分かった。
自分でも気がついてしまった、聴こえていないことに。