声が聴きたい
父さんにそう言われ「っ、だけどっ!」と、なおも興奮ぎみに大きな声を出してしまった俺に「先を見よう……な?」と秀が肩を叩く。
まわりの大人も『そうだよ、一番辛いのは和希だ』と伝えてくる。
「ご、めん……」それだけ言うとソファーに深く座り直し、父さんの話を聞いた。
俺が控えた番号に父さんがかけてみたら 待ってましたとばかりに出て、「お金、貰えるんでしょ?」と言ってきたという。
2年前にじいさんが亡くなったのを、聞き付けたらしく「遺産をよこせ」ってことらしい。
和希の事は一言も聞いてこないで。
父さんは「遺産なんてものはないってことと、籍を抜けて出ていったんだから、金輪際、こちらに関わってこないでくれ、何かあればこちらも法的手段をも辞さない気でいると伝えた」と疲れたように話す。
「兄妹として、悔しくてな……何がどこで間違ってしまったのか……」目頭を押さえながら頭を項垂れている父さんの姿をみて、小学2年の夏を思い出していた。
和希がストレス性の難聴になってしまうほどの、あの夏を。