声が聴きたい


「そんな、状態です。」母親達に向き直り話を続ける。


「ストレスによる、突発性の難聴だと思われますので。全く聞こえないのではなくて、小さめの声や音などを聞き逃してしまう程度、通常の会話ですと、少し聞き取りにくい感じになりますので、しばらくは心療内科と耳鼻科に通われて下さい。」


「分かりました、思ってもいなかったことではありますが、体的にはそれほどのことがなくて、まずは一安心致しました。心のケアは私ども家族で、心療内科の先生ともご相談させていただきながら対応します。本日はありがとうございました。」


椅子から立ち上がり深く頭を下げる母さんを見て、何となく……真似をして俺も頭を下げた。

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『中途失聴者』っていうらしい、と母さんと父さんが夜遅くに話していた。


読話、口話と言われる、唇を読んでコミュニケーションをとる方法と、筆談で、これから補っていくとも。


和希は今きっと寂しいはずだから、俺はこれからいつでも傍にいて助けてやろうと、静かに心に決めた。


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