声が聴きたい
そして流行りのバッグやアクセサリーなどを買って貰ってから、ようやく、映画などに行く。
そうして見せた笑顔に信吾は安堵し、それを感じ希美花は満足する。
そうして、半年ほど過ぎた頃、希美花の兄、優介が6年ほど付き合った5歳下の彼女、美都子と婚約、約一年後の来年のクリスマスに結婚すると報告してきた。
4歳違いとはいえ、まだ26歳の兄が女の自分よりも先に佐藤家として結婚するなんて、今までまだ想像もしてなかったことだけに悔しさと焦りが生まれた。
それを、デートの食事中に信吾に愚痴った。
「冗談じゃないわよ……これじゃあ、いくらあたしが頑張っても兄さんの結婚式に霞んじゃう、しかも、なんで美都子なんかが、あたしより先にウェディングドレス着るわけ?信じらんない……」
それを、希美花を労りながら聞いていた真面目な信吾は、心の中をドキドキさせながら、頭をフル回転させていた。
『今ならプロポーズ……』
先週までイギリスに出張していた信吾は、某有名ブランドの指輪を土産に、用意していた。
それを、コーヒーだけになったテーブルに静かに置いた。