声が聴きたい


「希美花……結婚、しようか?……して、くれるか?」うかがうような目で希美花を見つる信吾は「結婚……」と呟く希美花の返事を待つ。


普段の希美花なら『しようか』などと上からな感じで言ったらむくれるところだろう、信吾はそれに気がつきすぐに言い直したが。


だが、そこはスルーされて、『結婚』の言葉だけが入り込み瞬時に損得を計算する希美花。


そして……「いいわ、しましょ?私が卒業したらすぐ、ジューンブライドで」と不敵な笑みで返事をしたのだ。


それからの希美花の行動は素早かった。


信吾が普段忙しいと分かっているから夕食後、レストランを出るとそのまま自分の実家に一緒に向かう。


信吾からプレゼントされたエメラルドとダイヤの指輪を左手薬指につけて。

**********

「お父さん、お母さん、兄さんも。聞いてくれる?」リビングでくつろぐ家族にむかい、信吾を後ろに従えて、部屋に入るなり切り出す。


「なんだ、いきなり……やぁ、信吾くんいらっしゃい。」優しい父親の声が二人を迎える。







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