声が聴きたい
「信吾、そこ、座って。あたしが話す?」ソファに座るなり臨戦態勢のような勢いを感じる希美花に家族は『今日はどんなワガママを……』と内心思う。
「ん、僕が話すよ、いい?」と信吾が希美花に伺いを立てる。
「そう……まぁ、それがセオリーかしらね」と若干不機嫌なまま、信吾に頷く。
「あの、お父さん、お母さん、そして優介さん、先程、希美花さんにプロポーズしまして、いい返事を頂けたので……皆さんにもお許しをと思いまして。」
真剣な目の信吾と、どこか浮わついた感じの希美花を見比べる父。
「信吾くん、ありがとう。こんな我が儘な希美花と結婚という大きな決断をしてくれて。だが……いいのかい?仕事もこれからだろう?そんなに慌てなくても。結婚自体には反対はしないよ。だが……」そこまで言うと、チラリと希美花を見る。
希美花は、自分のことであるのに、呑気にキレイにネイルされた爪を眺めながら父親の視線を受け流す。
「大丈夫よ、お父さん。あたしと信吾はうまくやるわよ。」
事も無げに言ってのける希美花に家族は逆にますます不安を募らせた。