声が聴きたい
希美花の実家からは少し離れた隣の県だが、信吾の会社に通いやすく、何より希美花が気に入ったマンションだ、文句もない。
そして、いよいよ……6月の第一日曜日、希美花と信吾の結婚式となった。
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信吾の実家の力を見せつけるかのような、かなり豪華な披露宴となった。
オーダーのウェディングドレスにお色直しは三回、どうしますか、と聞かれた演出はほぼ採用し、通常の1.5倍くらい時間がかかった。
信吾は、準備を任せてしまう負い目からか、希美花があれこれやりたいと言うものを、ほぼ無条件で受け入れた。
実家の財力を借りて。
実家としては関東に繋がりができることで、今後の発展に活かしたいと、文句も言わずに出してくれたらしい。
そうして、希美花大満足の結婚式が出来上がった。
友人として招かれた、主に大学時代の友達は、まさか、信吾と、という思いで参列していた。
『希美花は九州に行くつもりなのか』皆は信じられない思いで並ぶ二人を祝福した。
実際は、希美花はそこまで考えていなかっただけだった。