声が聴きたい
数年の内にというわけではなかったことから、東京圏から離れなければならないことを、思い描くこともなく、どちらかといえぱ、『結婚』に捕らわれて忘れていたのだ。
盛大な結婚式が終わり、新婚生活がスタートした。
信吾の忙しさは変わらず、家で顔を合わす時間も少ないが、信吾はそれでも、幸せだった。
仕事ではまだまだ上手くいかないことや、理不尽な扱いをうけたり大変ではあったが、皆が羨む希美花と結婚できたのだ。
家に帰れば当然迎えてくれて朝も送り出してくれて……
だが、1ヶ月もすると、希美花はままごとのような生活に飽きたのか、夜は先に休むか、遊びに行き、朝は起きなくなった。
甘やかされた訳ではなく、家事は一通りできたが、あまり好きではない。
一人で食べるのも好きじゃない。
家の中でじっとしてるなんて、とんでもなかった。
生活する上の最低限の事だけは何とかやっている、そんな状態になり、信吾は戸惑った。
だが、忙しいためすれ違いの生活で、ゆっくりと話す時間もなかなか取れずにいた。