声が聴きたい
希美花が結婚して最初に驚いたのは、信吾の給料が思ったよりも少なかったことだ。
少ないと言っても、大卒の3年目にしては貰っているのだが、次期社長ということばかりが頭にある希美花は、最初から高額所得者だと、勝手に思い込んでいたのだ。
親から譲り受けた証券や不動産があるため、資産としては25歳では通常はないであろう額が、銀行に預けられていたが、それは、普段は簡単には出し入れできない。
信吾は、日常は自分の給料でやっていくことを当然のことと捉えていただめ、希美花と金銭感覚にズレがあることに、徐々に気が付いた。
デートのたびにプレゼントしたりしていたのが、裏目に出てしまったのだ。
信吾としては月に1度か2度しかできなかったデートだったため、それほど無理した感じもなかったが、今は状況が違う。
毎週のように、洋服などを買いに行く希美花を見て、眉をひそめた。
希美花と信吾の価値観や金銭感覚にズレが有ることを、互いに気が付いたとしても、キライな相手ではない。
まぁ、少しずつ歩み寄れれば、と、主に信吾は思いながら過ごしていった。