声が聴きたい
夏が過ぎ、希美花の体調が悪くなる。
希美花が妊娠したのだ。
信吾は喜んだ。
これで少しは希美花も、落ち着いてくれるだろうと考えたし、子供は好きで嬉しかった。
だが、希美花は最初、信吾に内緒にして、堕胎してしまおうかと考えたくらい、自分が妊婦になり、出産するなんてとんでもなくイヤだった。
だが、今までより優しく、甘くなった信吾に、これもありかなと思って受け入れたのだ。
優介と美都子の結婚式は、つわりがおさまった頃で、久しぶりにエステやネイルをして参加した。
年が明けて日々は過ぎ、5月、和希を無痛分娩で、計画出産した。
希美花は、ようやく体が軽くなりホッとした。
信吾は我が子が可愛くて幸せを感じた。
名前は信吾が、少しでも希美花が愛情を深めて欲しいと『希』の字を使い、自分達家族がこのまま丸く収まることを願い付けた。
希美花の実家も、九州の板谷家も、とても喜び、希美花も誉められたりして満更でもなく、しばらくは育児に追われながらも平穏な日々を過ごした。
その年の12月、美都子が優一を出産、和希と優一が2歳になる頃までは、希美花もあまり和希が手がかからなかったため、不満もあったが、なんとかやって来た。