声が聴きたい
和希が3歳になる頃、大学の同窓会があった。
そして、これに参加したことにより、過去の賛美されていた自分を思い出し、現状に強く不満を持つようになる。
この頃になると、信吾は大きなプロジェクトを担う若手の中心的存在となり、ますます、精力的に仕事をしていた。
家に帰れば、希美花より和希に構い、よき父親として存在し、夫としてはすっかり諦めていた。
同窓会に参加した夜、深夜に帰宅した希美花は、実家に預けた和希のことなど忘れて、ありったけの不満を、帰宅したばかりの信吾にぶちまけた。
「あたしの人生、どうしてくれるの!?大学の頃はあたしが着てるものも髪型も、肌だって常に一番だったのにっ……今のあたしは、抱っこのせいで腕や背中は痛いし、髪だって爪だってちゃんと出来てなくて……今日なんてみんなしてあたしを見ながらこそこそと笑って……悔しすぎるっ!これも全部信吾のせいよっ!!」
信吾にも言いたいことはこの4年の間にたくさんあったが、最初の幻想がすっかり消えた今、和希の将来以外は全て諦めていて、言い争うことにすらならず、それがまた、希美花を苛立たせた。