復讐
先程まで、真っ赤に紅潮した顔は、みるみるうちに真っ青になり、目は焦点を失い、口は半開きになり、電話が終わる頃には地べたに座り込んでいた。

そして、正臣の手から零れ落ちた受話器からは、プープープーという、通話がされていない事を告げる機械音だけが鳴り続けていた。

幸治は受話器を元に戻すと、正臣の正面に座り、彼の両肩を掴み問いただした。

「叔父さん。なにがあったん?」

まだ焦点ね合わない正臣は、随分と遠くを見つめながら、半開きの口を小さく動かした。

上手く動かす事が出来ないせいか、上の歯と下の歯がガチガチとぶつかり鳴らす音が、正臣の声を遮る。

「結衣が……」

「結衣が?叔父さん。結衣がどうしたん?」


「結衣が……」

「叔父さん、しっかりして。聞き取れへん。結衣がどうしたん?」

幸治はそう言うと、正臣の肩を激しく揺さぶった。

しかし正臣は、まるでぬいぐるみのように、幸治にされるがまま体を揺さぶられ、目から涙を流しはじめた。

「なぁ叔父さん。なにがあったん?しっかりしろや」


正臣は、ゆっくりと目の前にある幸治の顔を見た。




「結衣が…」
















「誘拐された」
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