甘くて苦い彼。
そのときのことはとにかく一生懸命だったのと頭の中が真っ白だったのでよく覚えてない。
でもその中でもどうにかなってしまいそうに苦しそうだった悠里がありがとうって言ってくれたことだけは鮮明に覚えてる。
それが初めて私と悠里が顔を見合わせた初めての出会いだったからなのかもしれないけど。
そのあとはもうなにがなんだか分からなくなるくらい大変だった。
運ばれてきた悠里の状況からも普通じゃないってことは安易に想像がつくけど、どうやら事情により家に帰れないので住むとこがないらしくて一緒に住むことになった。
あまりお兄ちゃんの帰ってこないこの家を一人で持て余してるのももったいないし部屋も余っているからというあまりに突然の同居だった。
最初は素性も知らないみずしらずの男の人と高校生が突然一緒に住むっていうことに抵抗もあった。
けど、あの一番最初にあったときのあの悠里の姿を思い出したら自己満足にしか過ぎない同情なんだろうけど嫌とは言えなかった。
それとは逆に進んで受け入れている私もいた。