甘くて苦い彼。
一人きりのこの大きな家が寂しくなかったといえば正直嘘になる。
この家には昔の思い出がありすぎたから余計にだ。
いつだって、私は過去のものばかりいつも綺麗に見えてしかたなかった。
もうそれはいつの日か忘れちゃったくらいのものもあるし今でも肌で思い起こせるようなそんな真新しい記憶のものまでの全部過去のもの。
気にかけないようにってずっと思ってきたけどそれは結局無理で。
でも過去にばっかりすがっていちいち気にかけている自分がしょうがないくらいに嫌だった。
それは過ぎたことなのに止まった時計の針のように幻想のような夢見がちなところが嫌いだった。
突然一人でいるときに押し寄せてくるどうしようもない感情も大嫌いだった。
何か変わらなきゃいけなかった。
自分が変わらなきゃいけなかった。
そして私はいつでもその口実になるきかっけが欲しかった。