甘くて苦い彼。



カツカツと乾いた音の響くローファーで足早に家を目指す。

春になったとはいえまだ外は肌寒い。




そういえば今年のさくらは開花がいつもよりも遅いって朝のニュースで言ってた気がする。


蕾だけがついた桜の木はどこか物悲しくてなんとなく嫌だ。









そんなときにケータイが着信を告げた。



着信はやっぱり彼からで。





「うんわかった」





まったく彼は本当に性格が悪いとしか思えない。

こっちが嫌とは絶対言わせないように巧みに言葉をつなぐ。




どうせ意味なんてないくせにまたそうして私を呼び出す。



でも誰よりも甘い。

だからまたイエスといってしまう。








はぁと息を一つこぼして、肩からずり下がったスクールバックを持ち直すと目の前の小石を蹴った。



















< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop