甘くて苦い彼。
肌を包む夜風がひんやりとして人工の光が目に眩しい。
結局私はまた彼に呼ばれてここに来てしまった。
ざわざわと人の多いスクランブル交差点に行きかう人たちの波。
目を指す無数のネオン。
北区にあるここはいつみてもなんとも言えない気分になる。
それは彼らの街と重ねて見ているところがあるからかもしれない。
奥に行けば行くほど歓楽街はものいえない何かが増していく。
きっとそれはこの世界に流れた涙の数でもあるだろうし物騒だけど流れた赤の数なのかもしれない。
表通りから左角を曲がったところにそびえ立つ一軒の店・・・
club sense
紹介なしでは入れないここは皆のあこがれの場所で。
様々な業界のいろいろな人が集まる場所だ。
いつもの店先の扉の前のちょっとガラの悪い用心棒のお兄さんに一礼すると
「お連れ様は3階、VIP席にいらっしゃいます」
と。
丁寧に扉を開けながら言ってくれた。