鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「やっぱ桐谷のお嬢様方は最高だね。
お嬢様としての気品やプライドがある。
あの女はもう駄目だね。
ちょっと相手にしただけですぐ束縛したがる。」

――パシッ。

未来は自分の髪に触れている男の手を叩く。

「触らないで。
私の母もそうして捨てたんでしょう!?
私はあなたなんかと婚約なんてしませんから!!
………今日はそれが言いたかっただけだから。」

もう何も知らなかった私はいない。
あの頃は何も知らず、大好きな優妃(ユウヒ)母様を助けることが出来なかった。
でも、今なら全て知っている。
愚かな{桐谷}が、優妃母様にしたこと全て。
私は何倍にもして返してあげる。
お前達なんか、地獄へ突き落としてやる。
一生抜け出せない、奈落の底へ。

未来は目いっぱいに涙を溜め、それが溢れる前にここを出ようと早足に去ろうとした。
すると、後ろで男が話しだした。

「いいの?
そんなこと言って。
未来さんのだぁいすきな優妃さんの形見…………取り返せないよ?」

「お前がその名を口にするな
汚らわしいっ」
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