鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「ちぇっ。
もうちょっと喜べよな。
でもホント羨ましぃ。
俺ら制服しか見たことないしさぁ。」

男の子はガッカリした表情で言った。
来は聞いているのかいないのか、無反応。

来には、今朝会った未来のあの“瞳”が頭から離れなかった。

「あいつ、淋しそうな目をしてた。」

来は無意識の内に、ぽつりと呟いていた。
思い出すのは未来のあの瞳ばかり。

「何か言った?」

男の子はキョトンとした顔で聞く。
来は初めて言葉にでていたことに気付いて、冷静を装いながら答える。

「いんや、なんにも。
那柚(ナユ)の勘違いじゃね?」

「かなぁ。」

那柚は悩みながら、ふと来の投げているテディベアが気になった。

「来来~~。
その可愛いテディベア何?
来そんなの持ってたっけ?」

すると来はテディベアを投げるのを止め、制服のポケットへ突っ込んだ。

「誰かさんの忘れ物。」

那柚はワケ分かんないみたいな顔で来の顔を眺める。
すると突然、那柚が思い出したかのように叫んだ。

「あ!
そいえばさ、今日代理来てんだろ?」

「だから今行ってんだけど。」

二人は笑いながら学園長室の前に来た。
すると、中から何か聞こえ、二人は恐る恐るドアを開ける。
そこには、こことは無縁だと思っていた人がいた。
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