鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「形見なんか……形見なんかいらない!
私はただ……鳥かごから出たいだけなのに……。」

未来の目から、我慢していた涙が流れる。

「鳥かごから出た鳥なんて、外に逃げても生きれませんよ。
あなただって同じだ、未来さん。
あなたは鳥かごの中にいるからこそ、存在価値がある。」

那(なぁ、なんで秀麗さんと桐谷さんが言い合ってんだ?)

来(知らね。)

二人はドアを開けて立ったまま、小声で話す。
気付いていないのか、未来と秀麗は話し続ける。

「私は……私は……私は……桐谷の名や、お金なんていらない。
ただ、解放されたいだけなのに。」



――ただ、
解放されたい――



秀麗は泣きやまない未来をそっと抱き締める。

「だから何度も言ってるでしょう。
私と結婚さえすれば、未来さんの母上優妃さんの形見や、少なくとも、桐谷よりは自由にもなれる……と。
お忘れになったわけではないでしょう?」

「……離せ。」

すると、秀麗は大人しく離す。

「二度と私の名を呼ぶな!
優妃母様の名を呼ぶな!
お前らなんかが気安く呼んでいい名前じゃないっ!
成り上がりのくせに、私に指図するな!
お前らみたいな愚かな人間の言うことなんか、誰が聞くものかっ」

取り乱す未来を気にせず、秀麗はドアの影から覗く二人をちらっと見ると、また未来の方を向いた。

「あまり騒ぐと、後ろで聞いている二人が驚きますよ。」
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