鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
秀麗は泣きながら話した。

未来には一人、兄がいるということ。
その人はこの男子校の3年だということ。
三人は仲の良い幼なじみだということ。
そして、

未来の“婚約者”であるということ。

「昔はさ、“秀ちゃん、秀ちゃん”って可愛かったんだぁ。」

それを聞いて、初めて来が口を挟んだ。

「じゃあ何でそんな未来を裏切るようなことしたんですか。」

来の中で、未来の変わり方にやっとつじつまが合った。
未来はただ、秀麗だからあんなになったんじゃない。
過去に、裏切られたからあんなになったんだ。
そして、名前を呼ばれることを拒否したのは、大切な人を傷付けられたんだ。

「それは婚約ということ?」

「他に何があるって言うんですか。」

来は冷たく言う。
秀麗はしゅんとなって、また出窓に座る。

「だよねぇ。
だって“みぃ”も、それから冷たくなったし。」

『みぃ』

二人は目を真ん丸にして驚く。
それに驚いたのか、秀麗も目を真ん丸にして驚く。

「未来のことをみぃって言ってたの。
ちっちぇえ頃に。
今でもつい言っちまうんだよなぁ。」

「じゃあなんで敬語なんすか?」

今度は那柚が秀麗に聞いた。

「みぃの母親に言われてさぁ。
あ、みぃんとこ継母なのね。
だから余計厳しくってさぁ。」

「結構大変なんすね、未来さん。」

那柚は何も違和感を感じていないらしい。
来はこんなにも違和感を感じるというのに。
< 16 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop