鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「未来を探しに行かなくていいんですか?」

来は秀麗に聞いた。

(イライラする。
秀麗さんは嫌いじゃない。
けど、……何かにすごくイライラする。
どうしてあいつのあの瞳に気付かない?!)

来の声がどんどん低くなっているのに気付かないのか、秀麗は窓の外を見て、来に言った。

「大丈夫。
外には出てないっぽいから。
となると、恭夜んとこか。」

秀麗が部屋を出ると、来と那柚も付いていった。

「そういえば、敬語のことなんですけど、母親に言われたってどういうことですか?」

「那柚は何でもずばっと言うよな。
未来の母親は、未来が嫌いなんだ。」

秀麗は無理に笑う。

「那柚、もう止めたら?
俺達が踏み込んでいいとこじゃない。」

来に言われ、那柚は渋々聞くのを我慢した。
そして、秀麗の足がぴたりと止まる。
そこは3年の教室。

……3-Ⅰ

「……ねぇ恭にぃ。
今日生徒会の先輩のところに泊まっちゃダメ?」

微かに廊下に響く未来の声。
秀麗は一歩も動こうとしない。

「未来のために皆集まるんだぞ……無理だろ。
俺ならまだしも……な。
俺もちゃんといるからさ、出てやろぉぜ。
雛森家の唯一の光なんだからさ、お前は。」

話の内容的に、未来は家に帰りたくないらしい。

「あれ……?
秀麗さん……、3年の恭夜って言ったら、確か恐いって噂じゃ……。」
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