鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
そして那柚が来ないように曲がり角に行き、胸の前で静かに十字をきった。

「来、何十字きってんの………って、待て那柚っ、お前マジで止まれぇぇ!!」

秀麗は静かに十字をきっている来に聞きかけた時、目の前に壁が迫っていることに気付き、慌てて止めるが時既に遅し。
恭夜は黙々と何かしていたが、勢いよく壁に激突した。
そのあまりの衝撃に三人とも気絶してしまい、来は

「ご愁傷様」

と呟き、保健医を呼びに保健室に行った。

しーんと静まりかえった廊下に倒れている三人。
その三人に向かって、静かに近付く二つの影。






















「恭…ぃ。」

思い出すのはいつの日か。

雨の日に初めて会った、
たった一人の俺の家族。

いつも憧れたあの人の写真を大事に抱え、誰の姿も映そうとしない虚ろな瞳。
でもその瞳はすごく綺麗で、俺は目が釘付けになった。

その子の抱えている写真が遺影でなければ、此処がお葬式じゃなければ、俺は君に会えたことに素直に喜べただろう。
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