鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
――今日から一緒に暮らすことになったお前のお兄ちゃんだ。――

どんな声してるんだろう。

――おにぃ……ちゃん?
わた、しの…――

意外だった。
もっと子供らしい明るい元気な声だと思ってた。
でも聞こえたのは、
虚ろな瞳に合った、消えそうな声。
普通の声はきっと、
小鳥の囀りのような
可愛い声だろう。

――“恭夜”だ。
そして“未来”だ――

“未来”―――

俺の妹の名前。
俺は名前を呼んでいいか分からずずっと固まってたら、

――はじめまして。
“恭にぃ”――

って言ってくれた。
初対面の時から、未来には助けてもらってばっかりだな。

「恭…ぃ。」

あの時聞きたかった声が聞こえる。

「恭にぃ起きてっ。」

うっすら目を開けると、そこには半泣き状態の未来がいた。

「俺……懐かしい夢みてた。
あの葬式の日。
あの時の未来さ、俺正直消えるかと思った。
でも今はこんなに成長してさ、驚きだよな。
もっと見たかったなぁ。」

「なんで遺言みたいに言ってるの?
少したんこぶができたぐらいで、死なないよ。」
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