鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
未来はため息を吐き、挨拶よりも深く頭を下げた。

「ごめんなさい!
兄にはこれから困らせないようにと、言っておきます。
秀ちゃんは認めたくありませんが、一応婚約者です。
これからは場所を選ぶようにと、きつく言っておきます。
だから今までの行いを許してもらえませんか?
お願いします!」

必死に頭を下げる未来に、乃谷は

「どうして、他人や兄のために頭を下げれる?」

と問う。
未来は下げていた頭を上げ、その問いに答えた。
その未来の瞳はすごく真っ直ぐで、乃谷は目を逸らすことが出来なかった。

「私は皆さんのように、生まれてからずっと兄といるわけではありません。
父と、生まれてからずっと一緒というわけではありません。
初めて兄と会ったのは母が亡くなった日でした。
初めて父と会ったのもその時です。
母のお腹の中で性別が分かるようになると、桐谷家は真っ先に性別を聞くことが決められていて、最初は一番必要な男の子。
2年後、私は女の子だと母のお腹の中で分かった時から用済みとされた母は雛森家で私を生み、育てた。
私は兄がいることを知らずに過ごし、雛森家で女性としての教養などを教えられて、幼くして多忙な日々を送っていたけどいつも笑顔の絶えない幸せな毎日だった。
なのに、父はそれをあっけなく壊した。」
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