鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
恭夜が未来の方へ歩み寄ろうとしたとき、秀麗が制止する。
恭夜は何かを悟ったらしく、一歩後ろへ下がった。

「未来。」

秀麗が未来の名を呼ぶと、未来は秀麗の方を見て

「何?」

と少し冷たく言った。
まだ朝の

“あの出来事”

が未来の脳裏をよぎり、いつものように優しく言えなかった。
でも、少ししか冷たく出来ないのは、未来の精一杯の優しさだった。












━朝早くにお仕事?

養護教諭ですよね?

どうして私があなたに妬かなければならないんですか?━












冷たく言う未来の言葉を無視して、秀麗は未来をそっ、と抱き締めた。

そして頭をぽんぽんと撫でる。

「……やめてください。」

未来は振り払おうとするが、男の力にかなうはずもなく……

「泣きたいなら泣いとけ。
大丈夫、来達には見えないようにしとくから。」

「………ぃょ。
ずるいッ、私がほしい言葉ばかり言って……ック、……こんな、ことしたってッ、秀ちゃんを好きにはならないッ……んだからッ。」

未来は秀麗をぎゅうっと抱き締める。










私に{ヒカリ}を教えてくれたのはアナタ。
私に{ヤミ}を教えてくれたのもアナタ。
あの頃の私にはアナタが世界だった。
だけどアナタは私を裏切った。
これはあの頃の私に誓った、永遠の誓い。

アナタなんか……二度と好きにならない。
< 39 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop