鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「お前達に話したいことがある。」

恭夜は真剣な顔で来と那柚に言うと、ベッドの方へ入る。
来と那柚はお互いに頷きあい入った。
乃谷は一人ぽつんと取り残され、取り敢えず廊下に出てタバコを咥える。
すると、廊下の奥の方から誰か女子生徒が走って来る。

(あれは白百合の……)

「……今日はやけにお嬢様のお客さんが多いな。」

とぽつり呟いた時、女子生徒は息を整えながら話す。

「あの、」

息を整えることに集中していて、聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で、必死に言葉を紡ぎだす。

「はい、なんでしょう?」

乃谷は紳士的な口調で答える。
すると女子生徒は睨み、

「人と話す時はタバコを出しなさい!」

と注意しまだ睨み続ける。

「………ハイ。」

乃谷は唖然として、自然と頷いてタバコを捨てた。

「携帯灰皿持ってるのは関心したわ。
一応マナーはあるのね。」

「大切な人からのプレゼントで……、あなたと同じことを注意しながらくれたんですよ。
ところでお嬢さん、何か用事があったのでは?」

乃谷はこれ以上文句を言われまいと女子生徒に問う。

乃谷の脳裏には、フェンスの外に座り足を空中へ投げ出し歌う少女の姿。
ローファーや靴下は丁寧に端っこに置いてある。
……自殺志願者に見えなくもない。

ご丁寧にローファーの上に靴下、その上に……紙。
歌う少女はうっかり煙草を落としそうになった乃谷に向かい、なんとも綺麗な……でも幼さの残る可愛らしい声で笑った。











私、自殺志願者じゃないよ?
死ねたらいいなぁとは思うけどね。
でも、そんなことしたら{   }に怒られちゃうかな……。

連れてってくれればいいのにさぁ……。
酷いと思わない?
月は太陽がないと輝けないのに……太陽にはいつも置いてきぼり。
重なったと思えばまた置いてかれて……。











少女の頬を伝っては膝に落ちていく一筋の涙。
夕焼けの橙の光で、きらきらと反射している。

叶わないと知りながらも、でも想いは募っていくばかり。

いい歳していい加減馬鹿だと自分を責めるも、駄目なんだと改めて感じさせられる。
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