鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「大丈夫ならいいけど……。」

私を心配してくれているのか、その人はなかなか手を離そうとはしてくれなかった。

「私を信じて。
初めて会ったばかりだから無理かもしれないけど、ライもいるんだから。
ね?」

言った後に気付いた。
私は初対面の人になんておかしなことを言ったのだろう。
自分で言うのもあれだが、私はこんなことを言う子ではなかったはずだ。

私がライのリードを持つと、ライは まかせろ。 とでも言っているかのように、助けてくれた人を見ている。

そんなライを見て、やっと安心(?)したのか、手を離してくれた。

「……分かった。
俺もこの犬と同じ{来}ってんだ。
桐谷来。
あんた、{桐谷未来}だろ?
オレ達の学校では超有名なんだぜ?
「「*鎖の家*の娘だから。」」

私は来くんが喋るのを遮り、ぽつりと言った。

皆そうだもの。
私を……{未来}を知ってるんじゃない。
*鎖の家*の{桐谷未来}として、知っているんだ。

来くんはため息を吐き、私に説明するかのように話しだした。

「あのなぁ、俺らの学校はあんたんとこの近くってだけで、ほんの少しの生徒しか桐谷家のウワサは知らない。
俺らんとこでは、あんたは憧れなんだよ。
毎日習い事や家のことで忙しいのに成績優秀、なのに疲れた顔は少しもしない。
おまけに、【白百合学園】のトップが集まる生徒会にも入ってる。」

私は即座に否定した。
そんなまやかしを信じていたら、後々後悔するのは目に見えている。

「私はそこまで憧れるような人じゃないよ。
バイバイ。」

私はライを連れて帰った。
冷たくは言ったものの、私は正直嬉しい部分もあった。
生徒会はただ家に帰りたくなくて入っただけで、今となっては凄く大切な場所。

だけど、家に帰れば良いことが続くわけではなくて………。
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