鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
~何処にも行かないで
私から離れないで
手の届かないとこへ
行かないで~

それは未来が言えずにいた気持ち。
切に願う想い。

綺麗な澄んだ歌声は、もちろんカーテンの外へも聞こえていた。

皆は自然とカーテンを開け、声のする方を見た。
そこには、涙を流しながら歌う未来がいた。

~行ってしまうのですか?
私をおいて
連れていってくれないの?
約束したのに
私が嫌いになったのかな
今では分からないの
あなたの気持ちが
何処まで本気?
いつから嘘になった?
私は分からない
なのに
迎えに来てくれるかも分からない
あなたを
私はずっと待ってるの

今でもずっと。。。~

「湖……都(コト)……。」

すごく小さくて、あまり聞き取れなかったが、誰かの名前を呟いたのは分かった。
未来は俯いたまま、じっとしてしまった。
すると、どこかでカチカチと何かのボタンを押しているような音が聞こえ、皆がキョロキョロしていると、未来が急に顔を上げた。

「……湖都音(コトネ)?」

〔どうかなさいましたか?〕
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