鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
母を思わせるかのような優しい声が聞こえた。
未来は涙を拭きながら、湖都音に話す。

「もう帰るからお迎え頼んでいぃ?
今日は友達が泊まりに来てくれるの。」

〔まぁ!
お友達がいらっしゃるのですか?
初めてですわねぇ
では、早急にお迎えにあがりますね。〕

未来は嬉しそうに電話を切った。

「湖都音さんに迎え頼んだのか?」

(ここからはもう一人の未来の時は″″を付けます。)

「″未来に他のヤツが運転した車に乗れ、と言うのか。″」

「おまっ……ハァ。」

「″何だ、その溜め息は。
妹に向かって失礼だろう。″」

「急に現れんな。
さっきまで未来だったじゃねぇか。」

そんな恭夜に、未来(?)は自信満々に言った。

「″私も“未来”だ。″」

どうやらこの“未来”は、未来よりもバカなようで、その場にいた全員が呆れてしまった。
“未来”はそんなことを気にせず、今度は悲しそうな表情で、

「″それに、湖都音との邪魔をしたらマジでヤツに怒られる。″」

と言った途端、ハッとし、

「″………じゃなくてだな、大好きな湖都音との邪魔をしたら未来が可哀想だろ。″」

と訂正した。

(“未来”………最初の方が本音か)

と、誰もが思った。
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