鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「………メイド?
だよね、来ちゃん」

「だと思うな、那柚ちゃん………って言えるかぁ!!
俺が言うと思ったか?!
誰が来ちゃんだってぇ?」

「言えるかぁって、もう言ってるじゃん」

那柚は保健室中を逃げまわり、来はマークを顔につけて追いかけている。

「何か言ったかぁ」

「言ってません
ひとっことも言ってません
“もう言ってるじゃん”なんてぇ」

――プッツン

何かがキレた音がした。

「那ぁ柚ぅ?
お前は一度ならず二度までも」

恭夜と秀麗は来の顔が鬼に見え、二人は心に誓った。

来は……キレさせまいと。

「お前ら、いい加減にしろよ。」

ドスの聞いた声に来と那柚は動きをピタッと止め、震えながら

『ハイ』

と呟いた。

「お前らは初対面の人間に指さして謝罪はないんかい」

そう、“メイド?”と那柚が言った時、思わず人に指をさしてしまったのだ。

「しかも挨拶もない。
しまいには人を無視して人の目の前をギャアギャア叫んで走り回って。
礼儀というものがないのか!!」
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