鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「帰る途中に那柚くんと来くんの家に寄ってね。」

「何故ですか?」

「それはね、今日泊まる友達だからなの
お泊まり、お泊まり」

その瞬間、湖都音の表情が固まった。

「男を………未来の部屋に入れるのですか?」

「ありえないよ
私には湖都がいるんだ……か、ら。」

未来が“湖都”と言った瞬間、湖都音と秀麗は気まずそうにうつ向く。
それに気付いた未来は、徐々に語尾(声)が小さくなっていった。

「秀ちゃんごめんなさい!
私悪気があって言ったわけじゃ「「もういい。」」

秀麗のいつもより低い声が、車の中に響いた気がした。

「ホントにごめんなさい!!
お願いだから、こっちを向いてよ……。」

秀麗の肩に触れようとする未来の手をぱしっと叩き、未来の細く白い手首を掴んで言った。

「“こっちを向いて”ほしいのは“湖都”だろ。
言う相手が違う。
湖都音、俺いったん家帰るわ。
游さんに言っといてな。」

そう言って、秀麗は車をおりた。
広い車の中に、すごく重たい空気が漂っていた。

そんな沈黙を破ったのは那柚だった。
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