鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「俺、秀麗さんや未来さんに何があったか知らないけど、でも………この空気は良くないです!」

『……………』

那柚の発言に、未来・湖都音・来は、目を丸くしてぱちくりしていた。
その状況に耐えられなくなったのか、未来が笑いだした。

「ぷっ、そうだね。
こんな空気、良くないよね。
……でもね、私が悪いの。
私が“湖都”なんか呼んだから……。」

「“湖都”っていう人は、“なんか”なんて言ったらダメですよ。」

那柚は真面目な顔で言った。
未来の目をしっかりと見つめて。
未来は那柚から目をそらすことができなかった。

「……どうして?」

「未来さん、“なんか”って言った瞬間、一瞬悲しそうな、淋しそうな気がしたから。」

「……それだけ?
私、他にも言ってない?」

未来は何かを求めるように那柚にすがる。

「あと、寝言で何か言ってました。
たぶん、口の動きからして“湖都”だった気が「「本当?!」」

「……ホントウ。」

未来はぱぁっと明るくなり、花のように笑った。
でも、すぐに笑みは消えた。

「だからか。」

それはどんな意味を込めての言葉なのか、未来以外誰も分からなかった。
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