鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「無愛想だけど、……優しい人だった。
私にとっては、今でも大切な人なの。」
















――優しい人だった――















過去形だった言葉が少し気になりつつも、無理に笑う未来がなんとなく悲しくて、二人は何も言えなかった。

ただただ、
























……悲しくて




……哀しくて




……愛しくて(カナシクテ)






















未来はその空気を察したのか、

「游さんのところへ行こぉか。」

と歩き出した。

やっぱり、通り過ぎる人全員が振り向き、頬を染めたりなどして挨拶している。

これのどこが

“鎖の家”

なのだろうか。

こんなに皆に愛されて、大切にされて、守られて。

もしかして桐谷家の被害妄想とかなんじゃないか

そんな考えが来と那柚の頭をよぎる。
近いうち、後悔するとも知らずに……――

――コンコン

「游さん…、未来です。
入ってもよろしいですか?」

「……どうぞ。」

「失礼します。
遅くなり申し訳ございません。」

游は窓の外を眺めて、意地悪そうな笑みを未来に向けた。
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