鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「遅くなったのは“湖都”を感じていたからかしら?
お部屋いっぱいのライラックだったものねぇ。
(他の花もウザイくらいあるけど)
匂いがこびりついてとれないんだから。」

游は、やだやだと大袈裟にしながら言った。
その瞬間、その場の空気が凍りついたのが分かった。

「まさか……っ、見た、の?」

未来は大きな目をさらに大きくし、信じられないというような表情になる。
だけど、微かに余裕があった。
それに気付いたのは那柚だけ…。

「見たも何も、部屋に入ったもの。
いかにもお嬢〜って感じの部屋で、しかもあの女やガキの写真なんか飾っちゃって……。
私への当て付け?
反抗してるの?」

未来は掌から血がにじんでもおかしくないぐらい、強く爪を掌に食い込ませる。
その手は小刻みに震えているが、未来は溢れる感情を抑えるかのように、空いている左の手で右の手を押さえていた。
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