鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
「私にはそんな鍵必要ないの。
それに、未来から離れるにはその鍵を持ってなくちゃ。
その鍵をくれるってことは、“出てけ”“もう必要ない”って言われてるもんじゃない。」

“じゃぁ、早く出ていってね”と言って、游は部屋から出ていった。














───…… が。

湖都音は勢い良く駆け出し、廊下を歩いている游を捕まえる。

「待ってください!!
私はまだお嬢様から直接“出ていけ”とは言われてません!
それに……私は未来の傍を離れてはいけないんです!!」

湖都音は涙を流しながら話す。
未来はまだそんなに離れた位置にはおらず、会話が全て聞こえていた。
そして誰にも見えないように、一瞬、辛く悲しげな顔をして、またすぐに何もなかったかのように湖都音の前に行き、ハンカチで湖都音の涙を拭く。

「未、来……………?」

湖都音は戸惑いがちに名前を呼ぶ。
未来はにこりと笑い、

「“お嬢様”でしょ?」

と言い、今度は游に向かって、

「私に仕えるメイドは私が決めます。
湖都音の言うとおり、私は“出ていけ”なんて一言も言ってはいません。
このお話はもぅ終わりでいいですよね?
“游お義母様”(ユウ オカアサマ)。」

と言った。
その笑顔は有無を言わさせないような笑顔で、その場にいる者全員が身震いした。
< 70 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop