甘い愛で縛りつけて
「あの、今のって事務の河合さんですよね?
名前で呼んでいませんでした? 親しいんですか?」
「親戚なんですよ」
「えっ、なんだ、そうだったんですかぁ」
あからさまに明るい声を出した桜田先生。
イライラしだした気持ちを吐き出そうとため息をついた後、ドアから離れる。
なんでイライラしているのかなんて、愚問だった。
素直に白状してしまえば、恭ちゃんが気になるからだ。
出逢って間もないのにだとか、昔の恭ちゃんを好きだった気持ちの余韻なんじゃないかとか、キスなんかしたから勘違いしてるんじゃないかとか。
誰にしているのかもよく分からない言い訳が頭の中に浮かんだけれど、どれも少し違っている気がした。
『いつでもおいで』
部屋を出る直前に聞いた恭ちゃんの声が、耳に残っていて胸を騒がす。
キュっと鳴いた胸に、思わず俯いた。