甘い愛で縛りつけて
◇「なんで私なんですか?」
「え……私がですか?」
桜田先生が恭ちゃん狙いだって分かった、数日後。
出勤するなり事務長に呼ばれたと思ったら、「朝宮くんの仕事を手伝ってあげなさい」なんて、突拍子もない事を言われた。
事務長のデスクの前に立ったまま呆然としていると、椅子に深く座った事務長が私を見上げる。
「彼もこの高校にきたばかりだし、色々と分からない事も多いだろうから」
「はぁ……。でも、手伝うと言っても、仕事の内容もまったく違いますし、私には無理かと……」
「だが、河合さんが傍にいれば、朝宮くんの緊張も解けるだろう。
聞いた話だと、親戚らしいじゃないか」
恭ちゃんは、緊張なんかするタイプじゃない。
二週間前、きゃーきゃー言われてる中、手を振っていたのを、同じ体育館内にいた事務長だって見てたハズなのに。
それに、恭ちゃんが現れてからというもの、やたらと恭ちゃんの事ばっかり考えちゃうから、少し距離を開けようって決めたばかりなのに。
恭ちゃんの言葉や行動にいちいち一喜一憂しちゃってる自分が、まるで、その……ちょっとマズイ感じの病にかかってるように思えて仕方ないから。
恭ちゃんと向き合うって決めたけど、それにしたって私の気持ちが落ち着かないから、少し冷静になるためにも距離を、って。