甘い愛で縛りつけて
◇「なんだよ、妬いてんのか?」
「ここが調理室で、そっちが被服室。で、つきあたりが図書室」
一年から三年までの教室がある北校舎を避けての校舎案内。
美術室や化学室、移動教室で使う教室が入っている南校舎は、授業中だからかしんとしていた。
たまに授業が行われている教室もあったりするから、そういう教室を避けながら簡単に案内する。
恭ちゃんとこんな風に校舎内をふたりで並んで歩くとか。
なんだか新鮮で、なんでだか少しだけドキドキしていた。
だって、やっぱり恭ちゃんってこうして見ると、カッコいいし。
背も高いし肩幅も広いし、桜田先生とか有坂さん達が恭ちゃんを手に入れる為に夢中になるのも、分からなくはない。
私が好きだったのは、あくまで昔の恭ちゃんだけど……。
この極上な容姿を持つ今の恭ちゃんを、自分だけのものにしたいって気持ちが少しは分かる。
色っぽくて低い声も、深く吸い込まれそうな瞳も、大きな温かい手も。
恭ちゃんの全部を独り占めできたら。
そう考えただけで、胸がキュっと締め付けられて苦しくなる。
そんな胸の前で手をギュッと握りしめてから、ハっと我に返った。