甘い愛で縛りつけて


引っ越し前日、急にその事実を告げられた私は思いっきり反抗して、恭ちゃんを隠すという大技にでた。

隠れたクローゼットの中で、恭ちゃんは無理矢理拉致されたにも関わらず、私を怒ったりはしなかった。
お母さんに見つかるまで、ずっと私と話をしていてくれた。

お父さんが集めた文庫本が詰め込んであるクローゼットの中で。

たくさんある思い出をひとつひとつ、私に話してくれた。
覚えてる?って言いながら、優しく、お伽話でもするみたいに。

「恭ちゃんは……いつも帰り道、私を送ってくれたよね。
私が勝手に追い回して迷惑掛けてただけなのに……」

恭ちゃんとの事を考えてるうちに、そんな事を思い出す。
考えてみれば、私は恭ちゃんと歩く帰り道が一番好きだった気がする。

六歳も歳の違う子に追い回されたって、迷惑なだけだったハズなのに。
恭ちゃんは一度も文句を言わなかった。

周りに変な目で見られて、嫌な感じのひそひそ話をされても何も……。

――あれ?

懐かしがって、ぼんやりと思い出していた過去の中に見つけた、違和感。
それが気になって、思考は急速にその時へとさかのぼる。


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