甘い愛で縛りつけて


確かに私と一緒の時、私たちを見て近所のおばさんたちが顔を歪めて小声で話してた。

だけどそれは、恭ちゃんひとりの時でもされてた気がする……。

小学生の頃、中学から帰ってくる途中の恭ちゃんの後ろ姿を見つけると、いつも驚かせようとそっと近付いた。
恭ちゃんにバレないように、そっと。

恭ちゃんまであと数メートルほどになった時、何かを感じて足を止めた事が何度もあった。
それは、恭ちゃんに注がれる視線。

近所のおばさんたちから、注がれる視線。
その時の私は、ただ恭ちゃんがカッコいいからだって思ってた。

髪型も格好も何もかも冴えなかったけど、それでも恭ちゃんは私にとっては一番カッコいい人だったから。
だから、おばさんたちも恭ちゃんを見ずにはいられないんだって思い込んでた。

だけど……。
あれは、あの視線は……そんな好意的なものだった?
私と同じように、憧れの眼差しだった?

あの時は気付けなかった事を、意識を集中させて思い出す。
小さい頃の記憶だし、あやふやな部分もあると思う。

けど、何度思い出し直しても、答えは同じだった。

おばさんたちからの視線は、私とは違うモノだった。


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