甘い愛で縛りつけて
それに対する恭ちゃんの答えは確か、そんな事ないよってだけだったと思うけど。
そう笑う恭ちゃんの顔も、いつもとどこか違っていて。
いつもと同じ笑顔なのに、どこか私を突き放す様な見えない警告を感じて、それ以上詮索しちゃいけない気持ちになった。
今まで記憶の奥に埋もれていた昔の記憶が、ひとつひとつ浮き上がってくる。
繋がっている、恭ちゃんと関係する記憶の糸。
だけど、まだ思い出せていない何かがあった気がして……。
頭の中から引っ張り出そうと努力してみるけど、それ以上は引くことのできない糸に、ため息を漏らした。
大切な事を思い出せていない気がするのに……。もどかしい。
「さっきから何考えてんだよ。変な顔したりため息ついたり」
顔を上げると私を見る恭ちゃんと目が合って、ぷいってそっぽを向く。
「私にだって色々考える事くらいあるの」
「へぇ……ああ、笠原だっけ? 異動になった実紅の好きだった教師」
「違……っ、笠原先生は、ただいい先生だなって思ってただけで、恋愛感情じゃないし!」
「ムキになるなって。
そんな必死に反論されると、実紅が本当に笠原を好きだったって言ってるみたいに思えてイライラする」