甘い愛で縛りつけて
「じゃあ、頼むよ。
河合さんはうちの大事な即戦力だから、きちんと家まで届けて欲しい」
「分かりました」
結局、入るタイミングを逃したまま会話が終わって。
事務長が部屋に戻ってから、私を振り返った恭ちゃんが「じゃあ、行くか」と言った。
「……恭ちゃん?」
「ん?」
「恭ちゃん……」
「だからなんだよ」
「本当に、恭ちゃんなの?」
21時すぎの暗い夜道を歩きながら聞く。
自分でもバカな質問だなと思いながらも確認せずにはいられなかった。
たまたま最寄駅近くの居酒屋での飲み会だったから、歩いて15分くらいの道のり。
だから別に送らなくてもいいって言ったのに、恭ちゃんは「さっさと歩け」と、少し強引に私の遠慮を押しどけた。
「恭ちゃん以外の何に見えるんだよ」
私の半歩前を歩きながら、恭ちゃんが呆れたみたいに言う。