甘い愛で縛りつけて


本棚から一冊の本を取りながら言う恭ちゃんはいつも通りだから、どう返事をすればいいのか分からなくなる。

冗談としてとって、ふざけないでよって交わせばいいのか。
それとも、問い詰めて、恭ちゃんの真意を聞くべきなのか……。

考えた結果、もう、このまま無視すればいいのかという考えに落ち着く。
変な間も空ちゃったし、別にわざわざ聞く事でもないし、恭ちゃんだって適当に言ってるだけかもしれないし。
キスしたのだって、やけに構ってくるのだって、本当にからかってるだけなのかもしれない。

私に特別な感情があるとしても、それがどれだけのものか分からないし、私の事犬だと思ってたらしいからそう考えると恋愛感情ではないのかもしれない。

だって、からかうような事や思わせぶりな事は言ってきても、恭ちゃんは肝心な事は言ってくれないから。
だから、私はまだ恭ちゃんの色んな事が分からないままだし、恭ちゃんが心を開いて話してくれないから――。

そこまで考えてから、自分勝手な考えに気づいてハっとした。
だって私、全部を恭ちゃんのせいにしようとしてる。

私が突っ込んで聞かないのは、恭ちゃんのせいじゃないのに……。

ただ、からかってるだけだとか、きっと私が望むような答えが返ってくるわけじゃないんだからとか、肝心な事は言葉にしてくれないからだとか。

そんなの全部言い訳だ。

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