甘い愛で縛りつけて
期待する気持ちが裏切られてもショックを受けないように保険をかけて、欲しがってた以外の返事が返ってきても何でもないようにって、たくさんの言い訳で本心をぐるぐる巻きにして守って……。
自分が傷つかないように、聞けない理由を恭ちゃんのせいにしようとしてる。
本当は、一歩踏み出すのが怖いのは自分なのに。
恭ちゃんを信じるって決めたのに、私が逃げてちゃダメなのに……気付いたばかりの恋心を傷つけられるのが怖くて、自分ばかりを守ってた。
恭ちゃんが私に心を開いてくれないからだなんて、全部を恭ちゃんのせいにして。
信じるって言い切った私が逃げ腰になって本音を言っていないのに、恭ちゃんがそんな私に心を開いてくれるわけがないじゃない。
怖気づいていた自分に気づいて、きゅっと唇をかむ。
ぶつけようとしている言葉を前に、心臓がトクトク速い速度で響く。
そんな心臓に急かされるように、恭ちゃんをじっと見つめて、ゆっくりと口を開く。
私から踏み込んでいくって決めたんだから、ここで逃げてちゃダメだ。
「なんで、私が笠原先生を好きだったら、イライラするの……?」
見つめている先で、恭ちゃんが私を振り返る。
緊張しながらも目を逸らさずに見つめていると、恭ちゃんは手に取った本を元に戻してから私に近づいた。
そして、私の目の前まできて、立ち止まる。