甘い愛で縛りつけて
「あ……司書の先生かも」
私と恭ちゃんがいる場所は、入口からは本棚が目隠しになって見えていない。
だから気付かれてはいないけど、教室から出るには、司書の先生が座る前を通らなくちゃ出られないわけで。
別にやましい事をしていたわけじゃないけど、授業中にこんなところでふたりきりでいたなんて、少しマズイかもしれない。
しかも、学校中が注目してる恭ちゃんと一緒って余計にマズイ気がする。
そんな風に思って、どう言い訳するのがベストかを考えていると、頭をぽんって叩くように撫でられる。
顔を上げると、いつも通りの顔した恭ちゃんがこっちを見ていて。
「俺が気ぃ引いとくからその間に外出ろ」と、命令口調で言われた。
訳が分からないままの私を置いて、恭ちゃんは本棚を抜けて司書の先生の方にカツカツと靴を鳴らして歩いていく。
それに気づいた先生が「あら、いつの間に?」と話しかけたのが聞こえた。
「勝手に入ってしまってすみません。
今度、保健だよりに熱中症の事を書いて、これからの季節に向けての注意を促そうと思っているんですが、その資料を探してまして」
「そうだったんですか。お探しの本はありましたか?」
「おかげさまで。でも、とてもキレイに配置してあるので、探しやすかったです。
部屋は主の心を表すなんて言葉も聞きますが、先生の心のキレイさがこの部屋にも出ているんですね、きっと」
「いえ、そんな……」