甘い愛で縛りつけて
◇「でも、私こんな格好だし」



「ちょっと! 河合ちゃんってばっ!」

校庭に白いラインで作られたバスケのコートをぼんやりと眺めていた時、隣に座っていた生徒が大声で言った。

「な、なに……? っていうか、そんな近くで大声出されたら耳痛いってば」
「河合ちゃんの耳なんて、この際問題じゃないし!
見てるでしょ? 試合。うちのクラス負けそうなんだけど!」

ただ事じゃないような顔で言う生徒は、小川さんっていって、生徒の中でも私を慕ってくれる子だ。

別に私は教師じゃないから慕われる必要もないんだけど、懐いてくれるのは正直嬉しい。
今日だって、グラウンドで行われている球技大会を覗きにきただけなのに、“一緒に応援しようよ”なんて声をかけてくれるし。

そう言ってきてくれた時の笑顔なんか忘れるほど険しい顔をした小川さんに、私も顔をしかめる。
私の耳が問題じゃないってどういう事だ。

「試合……? ああ、バスケのね。見てるよ」
「じゃあそんなに落ち着いてる場合じゃないでしょ!
河合ちゃん、あのスコア見えてる?!」

指さされた先にあるスコアボードには、22と16の数字があった。
8点差、つまり4ゴール差で小川さんのクラスが負けていた。


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