甘い愛で縛りつけて


相変わらず桜田先生にこだわる小川さんにひとつ苦笑いを零しながら、もらったウーロン茶を口へと運んだ。
五月中旬の五月晴れの今日、まだ少し肌寒くはあるけど、動き出すと結構汗ばむ。

後半が始まる合図のホイッスルが響いたのを聞いて、着ていたジャージを脱ぐ。
それからコートに入った……正しくは、入ろうとした。

「え……っ、あぶな……っ!!」

コートに入ろうと立ち上がった時、後ろから誰かが勢いよくぶつかってきて、歩いてた私は無残にもそのまま前へとバランスを崩した。
片手にペットボトルを持ってたせいで身体を支える事が出来ずに、肘と胸から転んでしまって……。
じんじんという痛みが、肘や膝から湧き上がる。

「いった……」
「河合ちゃんっ……大丈夫?!」

隣にいた小川さんが慌てて私の身体を起こす。

いくら地面が土でも、転べば結構な衝撃がある。
しかも、転ぶって事自体が久しぶりだから、精神的ダメージも大きい。

「河合ちゃん! 怪我は? 痛いとこない?!」
「大丈夫じゃないけど……まぁ、平気」

切れの悪い返事をしながら、ゆっくりと立ち上がって胸に付いた砂を払った。
痛みを感じる部分に目を移すと、右肘は5センチくらいの擦り傷が出来ていて血が滲み出していた。

そして、膝を見ようとジャージを捲りあげた時、小川さんが突然口火を切った。


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