甘い愛で縛りつけて


「どういうつもり?! 教師がわざと怪我させるなんて問題だしっ!!」
「え?」

いきなり何を言い出したのかと視線を上げると、小川さんの険しい顔の先には……女子の宿敵、桜田先生の姿があった。

……っていうか、ぶつかったの桜田先生だったんだ。
ああ、どうりでちょっと香水臭かったような。

「わざとじゃないもの、事故でしょ? 
ごめんなさいね、河合さん。大丈夫?」

色んな先入観があるせいか、桜田先生の態度も表情も、ちっとも反省しているようには思えなかった。
そんな態度に少しむっとしながらも、口論になれば小川さんが爆発してしちゃいそうだったから、平常心を心がけて返事をする。

「あー、はい。まぁ、大丈夫です」
「そう? でも、膝からも血出てるわよ? 保健室行ってきたら?」

桜田先生の視線を追って膝を見ると、確かに紺のジャージに血が滲み始めていた。
……どうりで足が痺れるはずだ。



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