甘い愛で縛りつけて


「ごめん。こんなの、ただの八つ当たりなのに」

目を伏せたままそう言った私に、恭ちゃんは何も言わずに立ち上がる。
そしてベッドに上がるとあぐらをかいて座って、私の身体を向い合わせた。

膝を付け合わせるような形になって何かと思って顔を上げると、恭ちゃんは真剣な顔でこっちを見ていて。
戸惑いながらも、目を逸らせずに、恭ちゃんの言葉を待った。

「つまり実紅は、今の俺が気に入らないって事か?」
「……違う。今の恭ちゃんじゃなくて……恭ちゃんがモテるのがイヤなの。
だって恭ちゃん、生徒にも教師にも人気あるし、そういうの見てるとなんか……」
「俺は、おまえにだけ好かれてれば他のヤツなんかどうでもいい」

遮られた言葉。
だけど、恭ちゃんが言った言葉は、私が言おうとしていた言葉を忘れるほど衝撃的で言葉を失う。

何も言えずにいる私に、恭ちゃんはいつも見せないような真剣な顔で続けた。

「他のヤツにどんだけ言い寄られたって意味ねーし。つーか、他のヤツになんか興味もない。この間も言ったろ」

思い出されるのは、図書室での言葉。
あの時恭ちゃんは、私だけが特別だみたいな事を言っていた。


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